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top > 2004年11月 > 22日
2004
Nov
22
AM0:00

Dear Friends,

 こんにちは、お久しぶりのムラヤマです。
 いよいよ寒くなってきましたが、皆さん、お元気ですか?
 私はといえば、この秋は体調の面でも絶好調、か~なり忙しく動き回っているにもかかわらず、今のところ健康そのものの毎日を送っています。よく食べ、よく眠っているのがいいのかな。それとも、外出から帰った時と食事の前には必ずうがいをしているのがいいのかな。いずれも基本中の基本ですが、けっこう大事と思います、はい。

 ところで――。
 皆さんもたぶんご存じのとおり、いま本屋さんには最新刊の『天使の梯子』が並んでいます。
 十年ほど前に上梓したデビュー作『天使の卵』の後日譚でもあるこの作品の語り手は、古幡慎一(通称フルチン)という大学生ですが、歩太や夏姫もちゃんと登場。とはいえ、『天使の梯子』だけで読んで頂いても充分満足して頂ける作品になっていますので、まだ『卵』のほうを読んでいないという方も、安心して手にとって下さいね。
 すでに皆さんから頂いている『梯子』への感想のお便りを読むと、少なからぬ人たちが、期せずして同じような意味のことをおっしゃっているのが印象的でした。
 すなわち、
〈自分が大切にしてきた『天使の卵』の世界が、続編によって壊れてしまうんじゃないかと思うと、最初は『天使の梯子』を読むのが怖かった〉
 と……。
 けれど嬉しいことに、その人たちの誰もがそれに続けて、
〈でもそれはまったく杞憂だったし、読んでよかった、救われる思いがしました〉
 と書いて下さっていて、そのことに私のほうこそどれだけ救われたか……そう、書き手である私にとっても、『天使の梯子』は(皆さんからの『卵』への熱い思いをひしひしと感じればこそ)取り組むのに勇気のいる作品だったのでした。
 でも、今はほんとうに、書いて良かったと思っています。なぜって、あの物語を紡ぎながら、つくづく再確認することができましたもの――ああ、やっぱり私は、小説を書くのがこんなにも、こんなにも好きなんだなあ、って。
 そう思えること自体が、ずっと支えて下さった皆さんのおかげです。
 ありがとうございました。

 えー、ここでこぼれ話というか裏話を一つ。
『天使の梯子』の単行本は、真っ白なカバーにブルーの涙のしずく、というシンプルなデザインになっています。しかもそのしずくの部分はくり抜かれていて、下の本体の表紙の写真が覗いて見えるようになっているんですね。私自身、ものすごく気に入っている装幀です。
 そして中をめくると、最初のタイトルページにもブルー系の写真が現れます。十字架をたずさえた天からの使者(?)と、若く美しい女性とがキスをしている彫刻で、イタリアの墓石を撮ったものなのですが――。
 じつはこれ、今ではもう無くなってしまった或る雑誌に、1990年に掲載された写真でして、ムラヤマはその写真に惚れこんだあまり、たび重なる引っ越しにも捨てることなく雑誌ごと大事にしまってあったのです。そう、十四年間にわたって。……ちょっと物持ち良すぎる? というか、ほとんど〈捨てられない女〉ってやつ?(笑)
 でも今回、『天使の梯子』の表紙デザインを煮詰めていくにあたって、最初に私の側からイメージを伝えるために提示したのがこの写真でした。そしてその後、デビュー以来十年以上のおつきあいになる担当さんが、この写真を撮ったフォトグラファー氏のもとを訪ね、そこで出合ったのが、実際に表紙に使われることとなった(白いカバーをめくったところにある)写真だったのです。
 表紙ひとつ決めるのにも、いろんな試行錯誤があるのですよん。

 ちなみにこの、カバーをめくった表紙の写真(上下に位置する男女が見つめ合っているもの)は、ルーブル美術館所蔵の有名な彫刻でして、「エロースとプシュケー」といいます。ギリシャ神話に題材を取ったもので、エロースというのは別名キューピッド、つまり翼をはやした愛の神。プシュケーのほうは人間の女性です。
 神話の物語の中で、二人は運命的な恋に落ち、一度は引き離されますが、幾多の困難を乗り越えて再び永遠の愛を誓います。この彫刻はおそらく、再会した二人が喜びに満ちて抱きあう一瞬をとらえたものなのでしょう。
 天界に住む者と、地に住む者との間に交わされる禁じられた想いと、その成就――これって、『天使の卵』や『天使の梯子』の世界とどこか象徴的に重なる気がしませんか。
 それに気づいた時は、偶然とはいえ面白い符合だなあと、なんだかしみじみ不思議に思ったものでした。

 ともあれ……。
 そんなこんなで上梓された『天使の梯子』は、私にとって、新たな十年の足がかりとなる大事な作品となりました。
 私自身の十年ぶんの歩みを刻んだ小説であると同時に、これまで支えて下さった皆さんへの、十年分の「ありがとう」をこめた〈お手紙〉でもあります。
 どうか、一人でも多くの皆さんのもとに届きますように。
 そして、できることなら〈お返事〉のかわりに感想などお寄せ頂けたら、心から嬉しく思います。



愛をこめて
From YUKA

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